2つの僥倖 手術痕と胃

2つの僥倖 手術痕と胃

 悪意がないのにウワサ話が本人に伝わるバツの悪さ。 

 

 手術前同意。インフォームド・コンセントで胃全摘の確認が済んでいるにも関わらず、ただいやだなーという感想を翌日新人看護師に漏らしてしまった。

 

 本当にただの感想だったのだが、軽率だった。

 

 その呟きを知った先生は激怒。

 

 平謝り。

 

 正直かっこワルかったが、格好の問題ではない。しかしこのことが、後に思わぬ奇跡を生む。

 

 私より若いが、医師としての経験は豊富。

 

 外科には別棟にER(緊急救命室)があり、連日フル回転だった。

 

 普段廊下ですれちがうと、先生は昨日OO時間しか寝れなかったよ、と冗談でいっていた。ドキュメントを地でいく忙しい現場だった。

 

 かっこいい。かっこいいけど・・・私の手術の前日はしっかり寝てくださいね、と思っていた。

 

 後日談だが、私の手術の時はやっぱりほとんど徹夜だったらしい。

 

 当日の気分は、思い出せない。

 

 ただ、別の棟に呼ばれ、怖くて怖くて仕方がなかったが、もう何が起こっても観念するしかなかった。

 

 友人や家族に見守られて歩く。

 

 もう引き返せない。

 

 手術は確実に怖かったが、スキルス性胃癌も怖い。

 

 やけくそ状態。

 

 歩いて近づく、今目の前に見える物々しい手術室の分厚いドアも怖い。

 

 ドラマで見る手術室があるが、私の手術を受けた病院は、そこに行くのに距離があり、看護士さんが先頭で一歩一歩徐々に近づくのが怖いのだ。

 

 絞首刑になるような、サイボーグ手術を受けるような・・・恐怖感がますのだ。

 

 その物々しいドアを開けると、マスクをつけた人が5〜6人いる。

 

 このフロア全体がいくつかの手術室で、私だけでなく別の人も手術を受けるらしい。

 

 見えないところにも結構人がいるのに棟全体が静かだ。

 

 自分から手術台に上る。

 

 先生が来て、挨拶する。

 

 忙しそうに打ち合わせを看護師たちとしている。

 

 お腹をまさぐられる。

 

 ぐぐぐ・・・。本当に怖い。

 

 始まるのだ。

 

 夢ではない、現実だ。

 

 観念しているが、何度も観念する。

 

 笑気ガスを使った。

 

 しかし、怖い中でも麻酔をすると意識は完全に遠のいていった。

 

 あっという間だった。

 

 ・・・遠巻きにサメに睨まれている感じは引き続きするが、眠ってしまった。

 

 というか気絶に近いと思う。

 

 集中治療室に一泊することになる。

 

 気がつくと、手術は順調で、数時間後には薄れた意識の中で別室にいることに気づく。

 

 激痛。

 

 ビニールのカーテンで囲まれたベットの上。

 

 少し動くと痛。

 

 激痛。

 

 でも麻酔で抑えてあるはず。

 

 わき腹と陰部にゴム管が直接挿入されている。

 

 わき腹の透明の管からは血の混じったリンパ液がベット脇のビニール袋へ・・・。

 

 考えられない、わき腹にゴム管が直接入っている。

 

 あー本当にサイボーグみたい。

 

 あと尿道に直接ゴム管が入っている。

 

 どうやって入れたんだ?

 

 おしっこを貯めるビニールも・・・。

 

 体をよじると色々な線に引っ張られる。

 

 脊髄に注射ポットを背負っていた。

 

 肩甲骨の間の脊髄に直接注射針が付いていて、手術痕が痛くなったら手元のボタンを押すと麻酔が直接脊髄に流れるという仕組み。

 

 翌日、半死半生で10メートルくらい歩かされる。

 

 集中治療室のすぐ脇が病室なのだ。

 

 大丈夫なのか?

 

 傷跡が開かないのか?

 

 腹を切られた落ち武者のような形相。

 

 歩き方。

 

 切った翌日歩かせるのが、病院の方針らしい。

 

 激痛でヨタヨタ歩いた。

 

 介助者は横にいたが、基本自力。

 

 家族も見ている。

 

 よく気を失わなかったものだ。

 

 痛かったらボタンを押してくださいね、とスイッチを渡されているが、これは背中の痛み止めと繋がっていて、押すと、プシュっと液体が直接脊髄にうたれる。

 

 痛いのでその時押しまくった。

 

 ヒヤッと気持ちいいだけでまったく痛みが取れなかった。

 

 結構危険な痛み止めなんだろう、2日位ではずされた。

 

 わき腹からは直接管がつながれ、血が滴り落ちてビニールにたまっていった。

 

 おしっこも直接管がつながれていてトイレには行かなくていい。

 

 大の方はでない。

 

 翌朝、先生が問診に来る。

 

 もちろん研修医もいたが、他の外科の先生も何人か引き連れて来ていた。

 

 若いのに・・・。

 

 手術後、家族には迷惑をかけた。

 

 近くのビジ・ホテを借りて、頻繁に来てもらっていた。

 

 友人も地元からワザワザ来てくれた。申し訳ない。ありがたかった。

 

 今思い出しても感謝できる。

 

 数日後、連日先生方が見に来る理由がわかった。なぜ私のところに複数の医者が来るのか。

 

 どうや傷口を見たいのだ。

 

 痛くてしゃべれないが、その数日間で状況が把握できた。

 

 縫ってないらしいのだ。

 

 ?

 

 どういうこと?

 

 つまり、素人の私にはよく意味が分からなかったが、切った後、縫ってないのだ。

 

 切った後、大きな手術用の絆創膏をぺたんと傷口に張ってあるだけ。至極簡単なこと。

 

 おいおいおいおい。大丈夫なのか?

 

 先生が絆創膏を剥がす。

 

 うわーいたたたた。

 

 みんなが見る。

 

 私も、じっくり見る。

 

 傷痕がムカデの足のようになっているかと思いきや、よく見るとみぞおちからへその上まで20センチ弱の1本線。

 

 先生いわくやってみたかったから、との答え。

 

 珍しい方法ではないよ、整形手術などではやっている。でも、この種の手術ではここでは君が初めてだ、とも。

 

 それで他の先生が手術痕を見に来たというわけだ。

 

 ちなみに、空けてみたら胃が意外に大きかったので、3分の1残しといたよ、とのことだった。

 

 
 
 全摘ではなかったのだ。

 

 3分の1でも胃があればいい。

 

 言ってみるもんだ、よかった。

 

 あきらめていた胃が帰ってきた。

 

 うわーん。

 

 泣きたかった。

 

 偶然なのか奇跡なのか。

 

 先生は腹腔鏡手術もするが、やったのは開腹手術だった。

 

 

 

 

 

 付記

 

 手術後5年以上たち、腹の傷の癒着もなく全く不自由がない。今、傷跡を見るとあの先生手術上手かったという感想である。

 

 むしろ少年時代の盲腸の傷跡が癒着がある気がする。

 

 つれる。

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